281.2008年2月7日、岩国基地沖合移設事業埋立承認処分取消請求の行政訴訟提訴(1)〜(7) 
   
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 本日13:30、岩国基地沖合移設事業埋立承認処分取消請求の行政訴訟を山口地裁に提訴しました。

 

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 提訴後、山口県弁護士会館で記者会見を行いました。

原告4人、弁護団6名が参加しました。

2月8日付け読売新聞ホームページに出ていました。

2月8日付け山口新聞ホームページにも出ています。

朝日新聞、中国新聞でも記事を確認しました。

 

 

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 続いて報告会。

弁護団を代表して、周南法律事務所の田畑元久弁護士が「重大な変更にも関わらず、住民への縦覧手続き、市町村長に対する意見聴取も経ずに、しかも岩国の政治的混乱状況に乗じてどさくさにまぎれて短期間で答えを出そうとしている県の姿勢に憤りを感じざるを得ない。山口県の弁護士だけではなく、県境を越えて広島県の弁護士とも連携をとって取り組んでいきたい」とあいさつをされました
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   今回の原告は18名、その内訳はうるささ指数75W値以上の地域住民が14名、沖合移設事業と一体で行われた愛宕山開発の周辺地域住民が4名です。原告団を代表して、原告団長の田村順玄さんからあいさつがありました。
「沖合移設事業は当初から基地を拡張する受け皿作りにすぎないと批判してきましたけれども、騒音、墜落の危険の回避として、「市民の悲願」というまくらことばがついて推進されてきた。けれども、完成する間際になって厚木から空母艦載機部隊が移駐してくることになった。2400億円を投じて、米軍再編の新たな展開場所として沖合移設事業が用いられようとしていることが1月8日の変更申請で明らかとなった。県のあり方にはどめをかけないといけないという思いから今日の提訴に至った」
ひきつづき、うるささ75W値の住民である原告が「騒音に悩まされてきたが、沖合移設で騒音が軽減されると少しの期待があった。この申請を認めるということになると厚木の艦載機を受け入れることとなり、騒音が拡大するということなる。県がこれを認めると、艦載機の移転を認めることとなり、重大なことである。こういうものには耐えられないというのが住民投票であらわされた市民の意思である。」とコメントされました。

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山田延廣弁護士から訴状について説明がなされました。

詳しい内容は、以下の報告、及び原告団声明をご参照ください。

 

 

   
                
 

<岩国行政訴訟提訴のご報告>

 本日、「岩国基地沖合移設事業埋立承認処分取消請求」の行政訴訟を山口地裁に提訴いたしました。原告は岩国市民(うるささ指数75W値以上の住民と沖合移設事業と密接にかかわりのある愛宕山周辺住民)18名です。原告団長は、岩国市議の田村順玄さんです。

 2008年1月8日に、中国四国防衛局が岩国基地の沖合移設事業の公有水面埋立法に基づく埋立事業の一部変更申請を山口県に提出しました。これは、米軍再編最終報告が閣議決定してからはじめての変更申請であり、明らかな用途変更なのです。

 にもかかわらず、中国四国防衛局は、公有水面埋立法13条の2に基づく用途変更手続きをとることなく、「添付図書の変更(差し替え)」としての変更申請しかしていません。それに対して、山口県知事は1月18日の記者会見において、13条の2に基づく住民の縦覧や市町村長に対する意見聴取などの手続きをとることなく、内部協議で、標準判断期間の32日以内に結論を出すと発表しました。32日以内ということは、2月10日までに承認してしまう恐れがあるため、本日提訴の運びとなりました。

 今回の裁判においては、@1996年11月28日付で山口県が国に対して行った埋立の承認処分の取り消しと、Aそれが認められない場合、山口県知事が今回の埋め立て変更申請を承認してはならないといういわゆる差し止めの両方を請求しています。

 現在行われている「沖合移設事業」は1968年に板付基地所属の米軍戦闘機ファントムが九州大学に墜落したことを受けて、同型機が配備されている岩国においても、市民から騒音と墜落の危険の回避を求める声があがり、それを受けて1997年に着工されました。つまり、当初の埋立の目的は「騒音の負担軽減」だったはずなのです。にもかかわらず、今回の変更申請で国は騒音予測を「ごく一部の区域では現状より増加する」と修正しました。

 つまり、今回の変更申請は、明らかに当初の事業計画の目的を逸脱しているのです。

 国が事業主で埋立が行われる場合、県知事に承認の権限があります。ですから、本来県知事は国に対して、変更申請を却下するか、13条の2に基づき用途変更の手続きを行わなければなりません。

 ですから、県知事に対して、用途変更を行わない以上、承認しないように求めるのが今回の裁判の目的です。

 しかも、今回中国四国防衛局が山口県に提出している「添付図書」として出されている「環境保全に関し講じる措置を記載した図書」の中の騒音予測に用いられているデータは2007年2月に防衛施設庁(当時)が岩国市内で説明会を行った時に用いた資料と思われます。しかしこの資料には、@その計算方式にはまやかしがあり、 A厚木と岩国の環境の違いは全く考慮されておらず、B厚木と岩国の飛行時間の違い(厚木は22時まで、岩国は23時まで)を考慮せず、機体は倍増するのに、飛行時間は20%としか増えないという不合理な予測が立てられているのです。

 ですから、山口県は国に騒音予測の再実施を含む環境アセスメントのやり直しを求めるべきなのです。それがなされないのであれば、県知事は1996年に行った埋立の承認を取り消さなければならないはずなのです。そのことをこの裁判で求めています。

 米軍再編に伴う厚木からの空母艦載機部隊の岩国への移駐をさせないためにも、この裁判は大きな意味があると思っています。

  今日の提訴には、18人の原告のうち4人が山口地裁へかけつけました。また、この裁判のために、山口県と広島県の弁護士たちが共同して弁護団を組んでくださいました。これは、広島県側にも騒音と墜落の危険が広がることに危機感を覚えているからです。つまり、現在の滑走路では、真北に工業コンビナートがあるため、米軍機は離陸するとすぐに右旋回していますが、沖合移設により滑走路が一キロ沖合に移設されると、戦闘機がまっすぐ北に向かって離陸できるようになるため、世界遺産宮島をはじめとする広島県西部を飛ぶようになり、戦闘機の数が倍増すれば、広島県側にも騒音や墜落の危険も倍増してしまうからです。

 そのように、今回の裁判は、岩国だけではなく、広島県にとっても大きな意味もあるのです。

 これまで岩国基地の爆音に対しては一度も裁判が提訴されていませんでした。
つまり、岩国基地問題については今回がはじめての裁判です。今後は爆音訴訟も提訴していきたいと現在準備をしています。

 このような事情からこの岩国の裁判を全国のみなさまにご支援いただきたく、ここにお願いいたします。

岩国行政訴訟原告団事務局


<原告団声明>

岩国基地沖合移設事業「埋立承認処分取消請求訴訟」***

原告団声明**

2008年2月7日

岩国基地沖合移設事業「埋立承認処分取消請求訴訟」原告一同

* *

私たち原告は、今日、山口地方裁判所に岩国沖合移設埋立承認処分取消請求行政訴訟を提訴しました。私たち原告の思いをお伝えします。

1、滑走路の沖合移設は騒音軽減のため。騒音増加は許せない。

 私たち、岩国の住民が、10数年前に貴重な瀬戸内の海をつぶしてまでも沖合埋立を認めたのは、ひとえに現在の戦闘機による騒音や墜落の危険などの軽減を信じていたからである。しかし、平成18年5月に閣議決定された米軍再編の「最終報告」によって、現在の57機に加え、厚木から空母艦載機部隊59機と普天間から空中給油機12機が移駐するという案が出された。これにより、いくら滑走路が1Km沖に出たとしても、戦闘機の騒音や墜落の危険が倍増することは目に見えている。私たちは、国が、これまでの「特に住宅の多い地域での騒音レベルが低下する」との騒音予測を「ごく一部の区域では現状より増加する」と修正し
たことを新聞報道で知らされ、強い憤りを覚えている。

2、国の変更申請書の公開抜きの県知事承認は暴挙。

 平成8年に承認された今回の埋立事業計画の目的は、騒音被害などの軽減にあった。ところが、戦闘機の数を倍増させ、騒音被害を現状よりさらに悪化させる今回の政府の方針転換は、明らかに当初の事業計画の目的を逸脱し、それと相反するものである。

したがって、当初の埋立の目的が変更されていることは明らかであるから、本来、適正な用途変更の手続を経なければならないはずである。

ところが、米軍再編の「最終報告」が閣議決定されてから初めてなされた今回の変更申請は、単に「添付図書の変更(差し替え)」の申請にすぎないというのが、山口県の説明である。したがって、県は国に対して変更申請を直ちに却下するか、新規の出し直しを求めるべきである。

3、県知事の変更申請の承認は、艦載機の移駐容認に直結。

 にもかかわらず、山口県は、本来用途変更の承認・不承認を判断するのに不可欠な、住民らへの縦覧手続きや市長からの意見聴取などの手続きを一切抜きに、1ヶ月足らずのスピード審査を行い、今回の変更申請を承認しようとしており、このような県の姿勢は県民を無視した重大な背信行為、違法行為であると言わざるを得ない。

 この山口県知事の姿勢は、艦載機の移駐を「容認」するものに他ならず、「住民投票」で表された「民意」に著しく反するものである。
 山口県知事は、沖縄県知事が、国に対して県民の思いをぶつけているように、県民の視点に立って、国に対し、適切な用途変更の手続きと航空機騒音調査の再実施を求め、国がこれを行わなければ埋立の承認を取り消して、県知事に与えられている重大な権限を行使すべき責任があるのに放棄している。

4、 深刻な騒音被害の救済を求める。

 岩国基地周辺の住民は、現在配備されている57機がもたらす騒音だけでもすでに、頭痛、めまい、高血圧などの身体的な被害や「イライラしやすい」「墜落するのではという不安」などの精神的な被害を訴えている。その騒音を軽減するはずの滑走路沖合移設工事が、かえって基地機能拡張のために利用されようとしていることに対し、我々原告は強い憤りを覚え、別途近々騒音公害訴訟を提起する予定である。

5、 本訴訟への思い

「国のだまし討ちが許せない」「これまで自分たちは基地による被害を忍従してきてしまった」「これ以上の基地機能はいらない」「これを許すと、50年、100年先も基地の町」という岩国市民の「民意」は、平成18年3月に行われた住民投票や同年4月に行われた市長選挙で明確になっている。私たちは、このような岩国の住民の切実な願いに対し、司法の判断を仰ぐために、今回の裁判に至ったのである。