424.2012年3月5日、呉市への海上自衛隊増強反対要請、ピースリンク広島・岩国・呉(1)〜(8) 
   

(1) 

 
 呉市に対して、海上自衛隊の増強に警鐘を鳴らし、市政に軍転法を活かす要請が、ピースリンク広島・呉・岩国により行われました。

ピースリンク呉世話人の西岡由紀夫さん(奥から2番目)から要請の趣旨説明

 

下にこの日の要請書

 

 (2)    
 ピースリンク呉のメンバーの平賀伸一さんが「要請書」を読み上げ

(3) 

 

平賀伸一さんが「要請書」を、呉市の総務企画部副部長、新原勉氏に手渡す

 

 

(4) 

 

対応したのは他に総務企画部岡本真総務課長と平岡和告係長

 

 

(5)  

 
 呉市からは「呉市の市民の命を守ることを考えるが、防衛は国の専管事項であり、申し入れの趣旨はわかるが、直接生活にかかわって騒音や漁業への被害が(予想され)ない限り、国に働きかける(要望をいう)ことはない。」と誠意ある回答ではない  

(6) 

 
 今回、お世話になった社民党山上文恵呉市議

(7) 

 
 

平賀伸一さんから市民生活にも影響を及ぼし、国に対して要請してほしいと訴える

 

 (8)    
   

1時間を超える交渉も、平行線のまま終りました。(下に西岡由紀夫さんからの報告)

 

   
              

2012年 3月 5日 

呉市長 小村和年 様


要  請  書

海上自衛隊の増強に警鐘を鳴らし、市政に軍転法を活かすよう求めます。

 呉市政の充実・発展に向けて日夜努力されていることに敬意を表します。
 さて、私たちは2011年6月24日(金)の中国新聞22面の記事「呉基地で桟橋新設・延長」によって、呉港内で海上自衛隊の施設が拡大されることを知りました。

 同記事には、“海上自衛隊総監部が港湾管理者である呉市に対し港湾計画の変更を要請、呉市は市港湾審議会に諮り、変更の許可を出した”とあります。海上自衛隊呉基地は、特に1980年代以降、米軍秋月弾薬廠司令部の江田島からの移転を含め、神戸製鋼の跡地の基地利用、Fバース・Sバースの延長、昭和埠頭の基地利用と、拡大の一途をたどっています。

 また、1998年4月の輸送艦「おおすみ」就役を契機として艦の大型化が進み、それは昨年4月就役のヘリコプター護衛艦「いせ」、2014年度末就役予定の22DDHなどとなって顕在化しています。

 このように海上自衛隊が増強していることは、『呉市制100周年記念版 呉の歴史』(呉市史編纂委員会編 呉市役所発行 2002年)「第8章 平和産業港湾都市への転換 第5節 機雷の掃海と海上自衛隊の設立 二.海上自衛隊の設立」(P325〜326)の記述「…とくに市の中心部にある旧呉海兵団跡の帰結については、呉市の将来が、産業港湾都市か海上自衛隊基地かを決する問題であったため、市民の間では激しい議論となった。結局、論議は結論をみないまま、海上自衛隊の増強がつづき、平和産業港湾都市構想は、少なからぬ影響をうけることになる」にあるように、呉市が以前から認識されていることです。

 そして1991年のペルシャ湾への掃海艇派遣以来20年以上、「専守防衛」の枠を超えて海外派遣が続けられています。私たちは、かつての呉が、海軍工廠を擁する海軍基地・軍港として「繁栄」してきたことは、当時の国策であったアジア侵略を支えてきたこと、そのような軍事拠点であったが故に6回にもおよぶ大空襲を受けて大勢の市民・軍人が死に、町が壊滅した歴史を学んできました。そのような歴史を反省して、1950年に旧軍港市転換法(以下、軍転法と称する)が制定されたことも学んできました。軍転法の理念はすばらしいものであり、呉市が「平和産業港湾都市」をめざすことは歴史の教訓に学んだ立派な歩みであると受け止めています。

 しかし、現実には、呉市が認識されているように、海上自衛隊の増強、つまり艦の大型化と基地の拡大は進行していく一方です。今回の港湾計画の変更について、呉市がどのようなスタンスに立ち、状況判断をして許可を与えたのかを知りたいと思い、私たちは「平成23年度 第1回 呉市港湾審議会議事録」(2011年6月17日)を入手して読みました。

 その中で、・ 小村市長の冒頭あいさつに「…この度は、海上自衛隊の大変大きな艦船を呉に配置をされる、していただくと私どもはそういう思いでありますけれども…」とあります(P1)。・ 小田会長のことばに「…呉港においては、他港と違いまして、海上自衛隊との共存共栄を市是とされており…」とあります(P5)。・ 事務局の説明に「…近年、海上自衛隊では、部隊運用などの効率化を図ることから、今年の3月に退役した護衛艦「ひえい」に代わり、さらに大型の護衛艦「いせ」が呉基地に配備されたように、艦艇の大型化が進められております」とあります(P7)。・ 海上自衛隊の尾島委員から「…ここに入る艦船が、年に数回ということがございましたけれども、例えば、色んなオペレーションの次第によっては、色々回数が増えるということは、あるということは、私の方で建言させていただきます」とあります(P12)。議事録全体の中で「軍転法」ということばはまったく出てきませんでした。

 また、例えば“桟橋の新設・延長は海上自衛隊の増強につながるのではないか”などのような、懸念を表明するような意見や質問もありませんでした。そのような中での変更許可でした。先にあげた4つの部分をつないでみると、“呉市は、海上自衛隊の艦艇大型化推進を認め、大型艦配備を歓迎し、そのことで共存共栄を図る。海上自衛隊のオペレーション(直訳すると「軍事作戦」です)の次第では艦船の出入港が増えるが、そのことは認める”となるのが、自然な解釈だと考えます。これは、軍転法の理念と逆行していることではないでしょうか。

 62年前、軍転法の制定の過程において、次のような文章が世に出ています。

 「百年の永きに亘り、営々として構築された旧軍港は専ら戦争目的にのみ供用されてきたのである。…。今次大戦は日本をほとんど破滅の状態において終結を告げ、三代にわたってここに定着した市民は住むに家なく、帰るべき故郷はすでになく、荒廃した軍施設を前に失業の群集と化し去ったのである。破壊されたスクラップの山と転覆した艦船の残骸はこれを眺める市民に戦争の惨禍と無意味さをしみじみと訴えるのである。市はここに180度の転回をもって、せめて残された軍財産を平和と人類の永遠の幸福のために活用し、速やかに平和産業都市、国際貿易港として更正せんことを誓うのみである。」(1949年10月、旧軍港市転換法案要綱 理由書)「かつて軍港都市であった呉市は、敗戦による苦難を経て今更正の悩みを続けている、戦争の惨禍を身をもって体験した市民は誰よりも平和を欲求し人類永遠の幸福を願ってやまない。/旧軍港市を転換し永久に平和産業都市として建設することは、わが呉市を更正させる唯一の原動力であり、同時に日本国民が戦争を放棄し恒久平和を実現しようとする意思を明らかにするゆえんであると確信する。/こゝにわれわれ十九万市民は、偽らない心構えを宣明するとともに平和産業港湾都市の速やかなる実現を熱望してやまないものである。」(1950年3月5日 呉市民大会 宣言)

  私たちは、軍転法60年にあたる2010年に、市政に軍転法を活かすよう呉市への申し入れを行いました。同年7月の「呉市政だより」においては、4ページにわたって軍転法のことを取り上げ、市民にその存在の大きさを示されたことは、申し入れの主旨を一定程度理解していただいたものと受け止め、感謝します。しかし、今回の港湾計画の変更の際には軍転法の精神が活かされたととらえることができません。私たちは、近い将来、集団的自衛権の行使が是認され、憲法9条が改悪されて海上自衛隊が「日本海軍」と化し、アメリカ軍と共に戦闘に加わり、呉市民でもある海上自衛隊員が「戦死」し、家族・関係者が悲しみにくれることを危惧し、そのような事態に展開していくことを何としても防がなくてはならないと強く思っています。そのためには、呉市民は、港湾計画の変更を含めた海上自衛隊の動向に無関心であってはならないと考えます。そのような観点から、次の要請をします。 

 1 海上自衛隊の増強(艦船の大型化、基地の拡張)について、軍転法の理念に基づき、呉市として「懸念の意」を表明すること。また、このことについて旧軍港市長会議の議題にあげ、連携して政府に対して声をあげていくこと。   2 軍転法の理念を具現化するため、戦争は二度としてはならないと、呉市として不戦の誓いを改めて表明すること。それは、例えば呉市観光パンフレットに「呉市は、かつて軍港でしたが、現在は戦争に加担しない「平和産業港湾都市」をスローガンにしています」などの短文を載せるなど、具体的行為として実行すること。
  
入れるな核艦船!飛ばすな核攻撃機!ピースリンク広島・呉・岩国(28団体)

カトリック正義と平和広島協議会 共育・共生を進める広島連絡会

呉教育労働者研究会  呉ピースサイクル
呉YWCA’79女たちから   8・6広島集会世話人会芸南火電阻止連絡協議会  

原発はごめんだ!ヒロシマ市民の会在日韓国青年同盟広島県本部         更紗の会
市民運動交流センターふくやま        障害者サポートセンターTOGETHER広島
ストップ・ザ・戦争への道!ひろしま講座   全国水平運動研究会
第九条の会ヒロシマ             毒ガス島歴史研究所
トマホークの配備を許すな!呉市民の会     広島キリスト者平和の会広島平和と生活を結ぶ会 

日本キリスト教団広島西分区牧師会
日本軍「慰安婦」問題を考える会・福山    広島YWCA
ピースサイクル広島ネットワーク       日本キリスト教団西中国教区基地問題特別委員会
平和を考える市民の会・三次         米兵犯罪を許さない岩国市民の会
わたしたちの性と生を語る会・広島      リムピース岩国


(連絡先)

呉世話人:西岡由紀夫(トマホークの配備を許すな!呉市民の会)
        呉市幸町3-1(呉YWCA気付) 0823-21-2414

広島世話人:新田秀樹(ピースサイクル広島ネットワーク)

        広島市中区大手町4-3-10(広島YWCA気付) 090-3373-5083

岩国世話人:田村順玄(リムピース岩国)

        岩国市牛野谷町3-75-19  0827-31-3383


(西岡さんからの報告)

呉市への申し入れについて
・日時 2012年3月5日(月)13時30分〜14時40分
・場所 呉市議会 会議室(呉市役所3階)
・参加者
○呉市  新原 勉(呉市総務企画部副部長)  岡本 真(呉市総務企画部総務課総務課長)
      平岡和告(呉市総務企画部総務課総務係長)
○ピースリンク  平賀・平岡・永富・藤井・新田・西岡
○同席  山上文恵(社民党呉市議会議員)

・「要請書 海上自衛隊の増強に警鐘を鳴らし、市政に軍転法を活かすよう求めます」の読み上げ・手交。
  その後、話し合い。
 自己紹介の後、平賀さんが「要請書」を読み上げる。
 話し合いは多岐にわたったが、副部長は「呉市の市民の命を守ることを考えるが、防衛は国の専管事項であり、申し入れの趣旨はわかるが、直接生活にかかわって騒音や漁業への被害が(予想され)ない限り、国に働きかける(要望をいう)ことはない。」といった内容であった。
話し合いでは、ピースリンクは、次のような意見を述べた。

・かつてLCACについて、呉市が自衛隊に申し入れ、騒音で市民生活に影響がでないようになった。
・呉基地について、海上自衛隊の「艦の大型化」が進んでいる。基準排水量でいえば9万2千トン(1998年)から13万9450トン(2010)と5割も増加している。

・桟橋の延長は、大型の22DDHとイージス艦を並んで泊めることができる長さになる。今後そう使用されないか、危惧する。

・海上自衛隊の尾島委員はオペレーション(軍事作戦)によっては年に数回に止まらず回数が増えると言っている。その影響が呉港に及ぶのは、2004年に成立した有事関連7法に基づいているのか。

・今後「想定外」のことが起こりうる。リスクがあることの想像力が必要だ。

・東日本大震災では自衛隊は呉からも派遣された。自衛隊がおらんようになれと言っているのではない。今回の中期防衛力整備計画では「動的防衛力」が謳われ、アメリカから共同行動(日米共同作戦)が求められているので、これまで通りにはならない。自衛隊員も呉市民である。

・「国にお願いする」と言われているが、機関としては国と市は対等ではないか。

・岩国では海兵隊の移駐について、山口県知事・市長ともに国に働きかけた。小村市長もどうか。

・自衛隊は専守防衛で、呉市は「共存共栄」と言われるが、あくまでも自衛隊の基地であり、戦争の戦闘能力を持っている。市民の中には「やはり怖い」という思いがあり、紛争に巻き込まれる恐れもある。そうした想像力をもってもらいたい。

・(市より)審議会は公開・非公開を決めていない。事柄によっては非公開になる。市民に知らせるのは縦覧で担当課が行っている。この件では6月17日の呉市港湾審議会で、縦覧は6月27日〜7月1日の5日間で、担当課に見に行ってもらうことになる。マスコミにはオープンで取材できる。

・今回は桟橋の延長は「一部軽易なもの」ということであるが、実際どのくらい桟橋が沖に出るのか。毎回ピースリンクのボートで出ているが、200mもでると、風が吹くと波が立つのではないか。

・(市より)本格的なものでは議会で審議ということになる。

・自衛隊史料館の展示には「自衛隊は他国に脅威を与えない」とあるが、今の様子は単なる護衛艦ではなく空母と言っていいものもあり、当時の戦艦伊勢などより大きく、戦艦大和とそんなに違わない長さになっている。

・LCACについて、飛渡瀬の整備場から呉湾を横切るとき自走して騒音が出ることのないよう運用にしていた。それは国に働きかけてそうなったのではないか。

・(市側)今は自走しているが、騒音や漁船に影響が出ているとは聞いていない。

・呉湾で事故がこれから起きるのではないか。自衛隊の艦船が通ると民間の船が避ける。
・大和ミュージアム(海事歴史科学館)では戦争の恐ろしさは伝わらない。
・(市側)非核自治体宣言は、電光掲示板で表示しているが、軍転法のものはない。市民の安全を考えて市政を進めている。

・軍転法の第8条には「旧軍港市の市長は、その市の住民の協力及び関係諸機関の援助により、平和産業港湾都市の完成することについて、不断の活動をしなければならない」とある。このことを生かしてほしい。

※ 趣旨を考えて、いくつかの話を内容から結ぶつけたものもある。

※ 担当者の名刺〜以前あった「戦艦大和の偽装中の写真」はなかったが、今度は「鉄のクジラ」がある。