443.2012年5月3日、民主主義の声があがるとき、九条の会岩国・憲法記念日、永山茂樹講演会(1)〜(10) 
   
 (1)  

午後2時岩国市民会館で、司会は長光宏明さん。改憲の声がかまびすしい今、昨年に続き永山茂樹さんを講師にお迎えした。

 

下に2004年6月10日に発表された「九条の会」アピールを掲載。この「アピール」(下に掲載)に応えて、2007年5月に「9条の会岩国」が発足。現在の世話人は如何の通りです。

 
 稲生慧(元図書館長) 尾川正之(元高校教員) 小澤哲男(元小学校教員) 黒元治生(障害児教育をすすめる会) 長光宏明(子ども文庫主宰) 長光千香子(子ども文庫主宰) 松本賢治(司法書士) 村田亜紀子(浄土真宗僧侶) 宮田伊津美(地方史研究家) 吉岡光則(元高校教員)

(2)

 
 

民主主義の声があがるときーフクシマ・橋本・改憲に抗してーと、永山茂樹さん(東海大学法科大学院教授ー憲法学)が1時間半にわたり熱のこもった講演。

新自由主義は、全世界的に格差をひろげ、わずかの者に富を集中させてきました。それに対しては、たとえばアラブの民主化運動、アメリカ・ウォール街のデモ行進など、世界の人々から大きな抵抗の運動が起きています。

そこで、日本の現状と課題を考えてみましょう。

私たちの生活を破壊しようとしている新自由主義は、日本でどのようなかたちをとっているでしょうか。対抗する人々の声はどこであがっているのでしょうか。あるいは、それがあがることすら、新自由主義は押さえ込もうとしているのではないでしょうか。

 (3)  
 

原発労働者が決められていた許容線量を大幅に超えた被曝線量を押し付けられる過酷な環境の中で働かされている。原発は本当に低コストか?安全対策、廃棄物対策を考えれば決して低コストではなかったことがわかったはず。

危険性を無視して再稼働をおしすすめようとしている政府。財界。

ベトナム・ヨルダン・トルコへ原発を輸出しようとしている。

 (4)  
 

「維新の会」の橋本が21%と新聞では高い支持率を得ている。東京の石原、名古屋の河村、阿久根の竹原と、民主主義を無視した効率主義の新勢力が台頭している。道府県を解体し、道州制を提案している。

改憲を先頭にたって主張している橋本は財界の支持を背景にしている。彼の「脱原発」は本物ではないはず。

「民主もダメ、自民もダメだから成り立つ政治手法」で、「権威をぶっ壊して自分が新しい権力に」なろうとしている。

 (5)  
 

公務員バッシング。地域経済の疲弊と民間の労働条件の悪化に結びついている。この5年間で各県の予算は大幅に減額され、山口県も岩国市も

大幅に公務員数が減らされていることを、具体的な調査数字を示しながら説明。

地方における「こころの自由」の縮小。日の丸・君が代問題。大阪での思想調査(アンケート調査)。

地方における「民主主義」の縮小。話し合いのプロセスを無視した首長の決断=リーダーシップを優先。「目新しさ」を餌に権威主義が進んでいる。

選挙で選ばれさえすればあとは何をしても良いという態度。

 (6)  
 

手間のかかる議会制民主主義を守る必要性。地方自治を守る必要性。デモ行進の自由、脱原発運動にはこれまでデモに参加していた中高年に加えて、大量に若者が、赤ん坊をかかえた父親母親が参加してきている。市民の自覚が目見見えるようになった。デモは憲法上重要な表現の自由の発露、これが大事。

投票も大事だが全てではない、「国民投票」は権力行使に正当性を与える危険性も持っている。

自民党が4月27日、自衛隊を「国防軍」に、国民の義務を列挙した改憲案を発表。

「大阪維新の会」や「みんなの党」は、参院廃止を「決められない政治」を打破する突破口にしようとしている。

「緊急事態」への対応を憲法へ明記すべきだとの動きが強くなっている。

みんなの運動で、このような改憲の動きを阻止しよう、と。

 (7)小ホールには100人近くの市民が集まり聴き入りました。    
 
 (8)  
 

(9) 

 
 若い人の参加が少ないことをどう考えるか、これからの改憲反対の運動をどうしたらよいのか、など会場から数人の質問がありました。

(10)この日の講演会を呼びかけられた「九条の会岩国」の宮田伊津美さん

 
 
   
              
   
  「九 条 の 会」 ア ピ ー ル

 日本国憲法は、いま、大きな試練にさらされています。

  ヒロシマ・ナガサキの原爆にいたる残虐な兵器によって、五千万を超える人命を奪った第二次世界大戦。
この戦争から、世界の市民は、国際紛争の解決のためであっても、武力を使うことを選択肢にすべきではないという教訓を導きだしました。

 侵略戦争をしつづけることで、この戦争に多大な責任を負った日本は、戦争放棄と戦力を持たないことを規定した九条を含む憲法を制淀し、こうした世界の市民の意思を実現しようと決心しました。

 しかるに憲法制定から半世紀以上経たいま、九条を中心に日本国憲法を「改正」しようとする動きが、かつてない規模と強さで台頭しています。その意図は、日本を、アメリカに従って「戦争をする国」に変えるところにあります。そのために、集団的自衛権の容認、自衛隊の海外派兵と武力の行使など、憲法上の拘束を実際上破ってきています。また、非核三原則や武器輸出の禁止などの重要施策を無きものにしようとしています。そして、子どもたちを「戦争をする国」を担う者にするために、教育基本法をも変えようとしています。これは、日本国悪法が実現しようとしてきた、武力によらない紛争解決をめざす国の在り方を根本的に転換し、軍事優先の国家へ向かう道を歩むものです。私たちは、この転換を許すことはできません。

 アメリカのイラク攻撃と占領の泥沼状態は、紛争の武力による解決が、いかに非現実的であるかを、日々明らかにしています。なにより武力の行使は、その国と地域の民衆の生活と幸福を奪うことでしかありません。一九九○年代以降の地域紛争への大国による軍事介入も、紛争の有効な解決にはつながりませんでした。だからこそ、東南アジアやヨーロッパ等では、紛争を、外交と話し合いによって解決するための、地域的枠組みを作る努力が強められています。

 二○世紀の教訓をふまえ、二一世妃の進路が問われているいま、あらためて憲法九条を外交の基本にすえることの大切さがはっきりしてきています。相手国が歓迎しない自衛隊の派兵を「国際頁献」などと言うのは、思い上がりでしかありません。
 憲法九条に基づき、アジアをはじめとする諸国民との協力関係を発展させ、アメリカとの箪事同盟だけを優先する外交を転換し、世界の歴史の流れに、自主性を発揮して現実的にかかわっていくことが求められています。憲法九条を持つこの国だからこそ、相手国の立場を尊重した、平和的外文と、経済、文化科学技術などの面から協力できるのです。

 私たちは、平和を求める世界の市民と手をつなぐために、あらためて憲法九条を激動する世界に輝かせたいと考えます。そのためには、この国の主権者である国民一人ひとりが、九条を持つ日本国憲法を、自分のものとして選び直し、日々行使していくことが必要です。それは、国の未来の在り方に対する、主権者の責任です。日本と世界の平和な未来のために、日本国憲法を脊るという一点で手をつなぎ、「改憲のくわだてを阻むため、一人ひとりができる、あらゆる努力を、いますぐ始めることを訴えます。

                                          2004年6月10日

井上ひさし(作家)、海原 猛(哲学者)、大江健三郎(作家)、奥平康弘(憲法研究者)、小田 実(作家)加藤周一(評論家)、澤地久枝(作家)、鶴見俊輔(哲学者)、三木睦子(国連婦人会)