72−1.2003年5月3日、憲法前夜祭、『居住福祉』が平和をつくる、イラク戦争NO!有事立法NO!講演会(1)〜(8)

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第九条の会「ヒロシマ」主催、司会は藤井純子さん

さとうさんより、多大なご骨折りによる、講演内容が送信されていますので下にのせました。(さとうさん自身のまとめについては、長くなり過ぎますのであえてカットさせていただきました。ご了解を。)

長いですが、新鮮で読み応えの講演内容です。

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岡本三夫代表より挨拶

「アメリカはかつて共産主義をやっつけると言って、戦争をした。今はテロリズムをやっつけるために中近東をやっつけるとしている。いずれも「正義の戦争」と考えて戦争を行なっている。」とし、こんなとき、九条をもつ日本は、「力による平和」ではなく、「非暴力による平和」こそ追求すべきである、と強調しました。

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早川和男さんより記念講演、『居住福祉』が平和をつくる

 

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早川さんは長らく神戸大学教授(現長崎総合大学教授)、阪神大震災の実像を暴かれました

 

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かなり専門的質問あり

            

安心して住めてこそ

早川さんは、住居や住環境をどうよくするかをテーマに研究をしてこられました。
早川さんはそうしたライフワークから、「安心して住むことは 人間生存の基盤」とし、とくに高齢社会の今、これこそ、福祉の基盤である、とされました。
「(人間にとって)安心できる、自然や社会により脅威にさらされないで安心して生きる社会が大事です。それには安心して住めることが不可欠です」と早川さんは強調します。
そして、中国には「安居楽業」という言葉が紀元前二世紀からあり、諸葛孔明も感嘆していると言います。
そして、まず平和でないと生きていけない、といいます。今、2230万人以上の難民が全世界にいます。そして、イラク攻撃でも多くの人が家を失いました。まさに「居住福祉」は反戦・護憲・平和と一体のものなのです。

阪神大震災の教訓

  早川さんは次いで、具体的な教訓として、阪神大震災を挙げました。 阪神大震災は、まさに「行政災害」であったと、早川さんは言います。地震による直接の死者は5502人。88%が家の倒壊で、10%が焼死でした。まさに「住宅災害」です。どうしてこんなことになってしまったのか?
犠牲者の53%が60歳以上、とくに34%が70歳以上です。また、神戸市平均の死亡率が0.26%でしたが、生活保護世帯ではなんと1.24%。実に5倍近くです。
すなわち、社会的弱者に被害が集中してしまったのです。
「きちんとした住宅政策・都市政策をやっていれば、犠牲者はこんなには出なかった」と早川さんは言います。
「居住保障なくして生存なし。生存権(憲法第25条)も護憲運動としてやっていくべきです」と早川さんは力説しました。
「高齢者や在日外国人にはなかなかまともな家を貸してくれないという実態がありました。これでは 憲法22条の居住・移転の自由も形無しです。「居住の権利なくして憲法なし」なんです。本当に居住の権利をきちんと保障して来なかったつけがでているのです、 と早川さんは悔しがりました。
神戸では、真冬の体育館に毛布一枚で寝る羽目になり、肺炎で死亡するものが続出したと言います。
また、仮設住宅も提供されましたが、今まで住んでいた地域から離れたところが多く、コミュニティが崩壊する中で、孤独死や自殺が続出しました。「見なれた風景や音、そして隣人が大事なんです」と早川さんは言います。

有事立法は本末転倒

 早川さんは、「イラク攻撃と都市再生法がオーバーラップ」すると言います。イラク攻撃はいうまでもなく、大量の住宅破壊と難民を出します。日本の都市再生法は、アメリカ型の市場原理主義を持ち込むもので、住民を追い出して、大型開発を行うものです。
敢えて補足するとすれば、両者とも、いわば大会社優先のアメリカのグローバル化戦略の産物とも言えます。アメリカの大会社の利益のための戦争。アメリカの大会社に都合の良い、グローバル化。それを採用する日本政府の「構造改革」に名を借りた都市再生です。
そして、早川さんは、「(攻めてくる敵はいないにとしても)災害などに備えて有事立法は必要、という考えがあるがそれはおかしい」といいます。
神戸では、老人ホームに避難した高齢者は助かった、といいます。そこにはヘルパーさん、栄養士さんもいます。体を拭いて、暖かいおかゆなども出ます。体力を消耗せずに済んだのです。老人ホームはここにおいて、防災の役目を果たしたのです。
神戸では、老人ホームは貧困であり、しかも、中心から外れた西区や北区に集中していました。これは、これらの地域で大規模開発を行なったことによります。
公園も神戸氏中心部では貧困で長田区では1人あたり、わずか1.6u。公園があればそこで延焼も防げたはずです。
中央市民病院も、ポートアイランドに移していました。震災で危険で渡れない状態になってしまったのです。補足すれば、これはポートライナーの乗客を増やして神戸市が儲けるためでした。病院へ行く人は体力が弱いから行くのです。それをわざわざ遠い所に作るとは本末転倒です。
ともかく「日常的に福祉や医療、環境に取り組んでいる延長線上に防災があります。」と早川さんは言います。付け焼刃的に有事立法を持ち出しても、役に立たず、それどころか有害です。
また、神戸市では、学者が地震の危険について報告を出していたのにこれを黙殺してしまっていたそうです。

護憲運動の新たな展開を

  護憲運動というと、わたしたちは、第九条を守れ、ということをイメージするケースが多いのではないでしょうか。自治労で取り組む平和運動なども多くはその文脈です。
しかし、もう1度、「居住の権利の確立なしに成立しない憲法」ということを想起すべき、と早川さんは言います。豊かな暮らしにしても、戦後の日本は資源エネルギー大量浪費によって達成しようとしがちでした。しかしそうではなく、「居住環境によって健康や暮らし、福祉を求めて行くべき」と早川さんは強調します。
  エアコンをガンガン回すのではなく、緑化を行なったり、水面を増やして涼しさを確保する、夏の高校野球は見なおすなどすべきではないか、といいます。
福祉に関係する労働者として補足すれば、まともな家に住んでいれば、病気にもなりにくいでしょう。医療費の増大や要介護状態の悪化を防ぎます。
さて、外国では、良い居住環境のためにきちんと社会運動が行なわれています。
アメリカでは、レーガン政権下で住宅への補助が切り下げられた時期がありました。これに対して、「爆弾より住宅を」というスローガンを掲げ、ホームレスの団体はもちろん、宗教団体、平和団体など幅広い人々が、ワシントンで国会や官庁街を埋め尽くすデモを行なったそうです。軍事費を減らして、国民に良い住宅を。この運動は、平和にもつながります。
フランスでも、寒さのために子供が死ぬ事件があり、これを契機に大デモが起こり、政府は100,000戸の公共住宅を供給する政策を発表する羽目になりました。
日本ではどうでしょうか。鳥取県の片山善博知事が「居住福祉」の実践者です。同知事は、鳥取県西部地震に際して、住宅再建に一人300万円、修理に100万円の補助を行なう制度を独自に作りました。同知事は住宅は「政治の根幹」といいます。こうした流れを全国にも広めて行きたいものです。広島でも芸予地震の問題がありました。他人事ではありません。例えば、自治労としても、住民生活を守る観点から、要求して行く必要があると思います。