2008年2月21日
広島県知事 藤田雄山 様
米兵による女性に対する暴力事件についての抗議と要請書
2月10日に沖縄において、海兵隊所属米兵が14歳の少女に対して暴力をはたらくという痛ましい事件が起こりました。これに対し、沖縄だけではなく、全国各地から怒りの声があげられています。
このような事件が再び引き起こされてしまったのは、私たちが昨年10月14日に広島において岩国基地所属の米海兵隊員4人が19歳の女性に対して起こした暴力事件について、被疑者米兵の身柄の引き渡しを要求することなく不起訴処分となり、事件をうやむやにしてしまったことの結果であると、改めて広島県警及び広島地方検察庁ならびに広島県に対し、強く抗議いたします。そして、改めて10月14日に起こった事件について真相を究明し、被害者に対して適切な誠意ある対応を行うとともに、二度とこのような事件を引き起こさないために、県として具体的な施策を講じられることを強く要請いたします。
それは、2月10日に沖縄で起こった事件と、昨年10月14日に広島で起こった事件とは別のものではなく、関係のある出来事だからです。それは、日本に米海兵隊が駐留しているのは沖縄と岩国だけであり、同じ海兵隊米兵によってこのような事件が引き起こされているからです。
事件が起こるたびに行政などが米軍に対して「綱紀粛正」「兵士教育」を求めますが、そのたびに米兵たちに対して「外出禁止令」が発動されたとしても、ほとんど何の意味もなさず、広島の事件から4カ月も経たずに、今回の沖縄の事件が再び引き起こされてしまったのです。それは、「綱紀粛正」「兵士教育」が名ばかりであり、全く実質が伴っていないことを意味しています。
そのことからも、岩国基地に隣接する広島県が、岩国基地に所属する米軍がどのような性格を持ち、所属米兵がどのような状況に置かれているかを認識し、米軍が岩国に駐留していることとそれがもたらす被害について、それがなぜ引き起こされるのかという根本的な問題から問い直す必要があるのです。
10月14日の事件に対する対応をみると、広島県は岩国基地から20キロあまりしか離れていないにも関わらず、そこに米軍基地があり、所属米兵が広島県に出かけてきては事件や事故を引き起こし続けていることに対する認識が欠如しているように思われてなりません。なぜ、被害者が訴え出ており、金品が強奪されており、4人の米兵によって行われたことが「合意」であるはずがないにもかか
わらず、不起訴処分という結果になったのでしょうか?広島県は今一度、今回の事件の経過を究明する必要があるのです。
それは、今回の事件だけではなく、岩国だけではなく、広島においても米兵による事件、事故が後を絶たないからです。特に女性に対する暴行事件の場合、被害者が訴え出ることが難しく、泣き寝入りをさせられていることが多いため、行政としても的確に認識されていないのが現状です。
被害者が訴え出ることが難しい背景には、昨年10月20日の藤田雄山県知事の発言に象徴されるように、本来責任を追及されるべきなのは加害者であるのに、その責任が擁護され、あたかも被害者に非があるかのように論じられることは被害者を二重にも三重にも苦しめることであり、断じて許されることではありません。しかも、本来被害を受けた県民に寄り添うべき立場にある首長が加害米兵を擁護する行為を行ったことに対し、強く抗議致します。これは、明らかに二次被害であり、決してあってはならないことです。そのような発言をされた藤田県知事には被害者ならびに県民に対し速やかに謝罪されることを要請します。
広島地方検察庁は「不起訴処分」としましたが、2月14日には岩国基地内で軍法会議の予備尋問が開かれており、そこで被害者が証言し、被害を訴えています。なぜ、広島の捜査機関は被害者の訴えに耳を傾けなかったのでしょうか?不起訴となった原因については「本人の供述があいまい」と報じられましたが、2月14日の被害者の証言から考えると、事件当時、供述があいまいにならざるをえない状況に追い込んだのは、捜査機関であり、藤田県知事の発言なのではないでしょうか?2月15日の新聞報道によると、「被害者は広島県警の調べに状況を正確に話さなかった」と証言されています。被害者が受けられた肉体的精神的苦痛から考えれば、女性に対する暴力事件に対する認識の深い人によって丁寧な対応をされない限り、被害者は本来感じなくてもよい罪責感を感じさせられてしまうのす。そのような被害者の状況を全く理解せず、被害者に対して適切なケアをなされなかったことに対し強く抗議いたします。また、被害者「自分の軽率な行動が恥ずかしかった」と証言したと報じられていますが、被害者にそのような思いを持たせてしまったのであれば、それは捜査機関の明らかなミスであり、断じて許されることではありません。
捜査機関に対し、速やかに被害者に対して謝罪し、自らのありようを反省するとともに、今後このようなことが起こらないように、女性に対する暴行に対する認識を深め、カウンセラーや弁護士などと連携しながら適切な対応ができるように具体的な施策を講じてください。
被疑者が米兵の場合、県だけではなく、日本政府も対応することと思いますが、日本政府は被害者の立場に立つのではなく、日米軍事同盟に基づき、その同盟関係を維持するために、米軍を擁護するために奔走します。ですから、県民の立場に立ち、被害者を擁護できる立場にあるのは県なのです。県は日本政府の言いなりになるのではなく、被害者の盾となって、適正で公正な対応が出来うる構造を県の中に構成していただくことを切に要望いたします。
それは、米軍再編によって厚木から空母艦載機部隊が岩国に移駐されようとしています。今いる海兵隊に加え、約5000人の米兵とその家族が移駐することになります。それを実現させてしまうと、これまで以上に広島県民は米兵とその家族による事件や事故にさらされるのです。それに対して、広島県として具体的な施策が講じられているようには思えません。岩国市民は今もなお艦載機の移転には反対の意思を貫き続けていますし、広島県西部の自治体も反対期成同盟などを通して反対の意思を表し続けていますが、今後も引き続き、米軍再編を白紙撤回するために、広島県としても取り組まれることを切に要望します。
このような事件を二度と引き起こさないためにも、今一度昨年広島で起こった米兵による女性に対する暴行事件についてその真相を明らかにするために、尽力されることを切に要望いたします。なぜそのような事件が引き起こされ、今回沖縄で再び引き起こされてしまったのかについて県民に明らかにするとともに、県として県民が安心して暮らせるように沖縄をはじめとする全国の基地を抱える自治体と連携しながら具体的な施策を講じられることを要望いたします。
1、藤田県知事は10月20日の発言について、被害者および県民に対し、速やかに謝罪すること。
2、被害者が米軍の行った軍法会議で被害を訴えているにも関わらず、なぜ不起訴処分となったのかについて、改めて究明し、明らかにしてください。
3、捜査機関が被害者に対し、状況を正確に話すことができないような聴取をしたことについて謝罪するとともに、女性への暴行事件の被害者に精神的ケアも含めた適切な対応がとれるように、捜査機関に対し県として要請してください。
4、被害者に対し、捜査機関が本来感じなくてもよい罪責感を抱かせてしまったことに対し、謝罪するように要請してください。
5、県として、国の行うような米軍を擁護するための対応ではなく、県民である被害者の立場に立った対応ができるように、情報提供や相談窓口を設置するなど具体的な施策を講じてください。
6、現在もなお、広島県各所に岩国基地から米兵が出かけてきては、事件、事故を繰り返しています。このようなことが起こらないように、県として具体的な施策を講じてください。
7、被害者の立場ではなく、米軍を擁護するための「日米地位協定」の抜本的な見直しを県として日本政府に要請してください。
8、米兵による事件事故を倍増させる可能性の高い米軍再編について、広島県として反対の意思を表し、行動し続けてください。
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