294−2.2008年8月5日、8・6ヒロシマ平和へのつどい2008(11)〜(20)  
   

(11)

 
   

次に、スティーブン・オカザキ監督のドキュメンタリー映画「ヒロシマナガサキ」の共同プロデューサーを務めた繁沢敦子さんを紹介。

 

(12)

 
   

繁沢敦子さんは「ヒロシマ・ナガサキの継承」について発言されました。読売新聞大阪本社入社後、岡山や広島勤務を経て広島市立大学広島平和研究所編集員。その後フリーランスで翻訳・通訳、執筆活動を行っておられます。海外メディアの被爆地報道にも携わっておられます。

 

(13)

 
   

「多くの被爆者が被爆体験を語らないのは、語る内容がないからではない。その体験は決して他人には理解してもらえないと思っているからだ。被爆者の多くが自分の子や孫にも体験を話したことがないという。一方でその多くの人が、今のうちに伝えておかねばという思いを抱えている。被爆者が恐れているのは、話すことよりも、聞こうとしない無関心であり、聞いたことを自分のこととして共有できない想像力の欠如。その背景には効率ばかりを求める社会、戦争を過去のこととして一顧だにしない社会の風潮がある。」

 

(14)

 
   

「取材では、被爆当時の記憶がない幼年被爆者や原爆投下後に爆心地付近に入った入市被爆者から、期待される話ができないもどかしさも聞いた。しかし、そうした人の中には、原爆孤児だった人もいれば、いつ忍び寄るかわからない原爆症への不安を抱えている。放射能の影響が長期わたる以上、被爆体験とは今に続く戦後の暮らしや歴史をも包含する。そうした体験に取捨選択なく無条件に寄り添うこと。それができるのは身近な存在である家族、友人であり孫かもしれない。身近な被爆者の体験(話したがらないことを含めて)を知ろうと努めることが、被爆地のアイデンティティとなり、被爆者無き後を担う次なる世代となりうると考える」と。

7月29日の静岡新聞に繁沢さんの執筆されたものが掲載されました。

 

 

(15)

 
   

湯浅一郎さん。当実行委員会代表、また、ピースデポ代表、もちろん、ピースリンク産みの人です。

「北東アジア・9条・非核地帯」と題して発言。「今、人類は、貧困、環境問題、食糧問題など切実で共通の課題が山積。生存基盤の継続性のために一致協力して取り組まねばならないとき。そんな時に”軍事、核、戦争にエネルギーや予算を浪費する余裕があるのか?”そう言う疑問に多くの人が気づき始めている。」

 

(16)

 
   

「市民の側が”軍事力によらなくても平和は作れる”という対抗構想、9条の精神を具現化した政策提起、実体化が必要。38度線のある朝鮮半島を含む北東アジアをどうするか?核抑止に依存した非核保有国の日本、韓国を軸に、地域安全保障の枠組みを多国間の協調によって核兵器に依存しない地域ブロック、すなわち『非核地帯の実現』をめざす。」

 

 (17)  
   「この40年で、地球の南半分は非核地帯。被爆国としての日本政府をどう動かすか。このような北東アジア非核兵器地帯の可能性に活かす枠組みは、NPT2000年再検討会議の最終文書核兵器保有国の『保有核兵器の廃棄に関する明確な約束」など13項目のステップ、2006年「大量破壊兵器委員会報告』(ブリックス報告の勧告30)、2007年・2008年キッシンジャーらの「核兵器のない世界」論文、『核保有国』イギリスに対するスコットランド自治政府の決起、アメリカの政権交代によるCTBT批准の可能性などがある。秋の臨時国会では、給油新法の延長問題が焦点化し、その先に改憲の先取りである派兵恒久法が待っている。今のうちに9条を鍛える、具現化した政策が必要だ。」と訴えました。

 

 (18)  
   ピースサイクル全国ネットワーク、ヒロシマネットワークの新田秀樹さん。今日の昼間、ピースサイクルの皆さんは原爆ドームに到着しました。ピースリンク広島・呉・岩国の広島世話人(もちろん「つどい」実行委員会も)として頑張っていますが、ピースサイクル全国ネットワークの立場での報告のあと、
 (19)  
   「市民による平和宣言2008」(下に)を提案。

 

 

 (20)  
   朗読したあと、満場一致で採択され、第1部は終了。

 

 

 

   
            

 市民による平和宣言2008


 イラクの事態は開戦から5年を経て完全に泥沼化し、アフガニスタンでも打倒されたはずのタリバンが復活して、両国では今も毎日のように死傷者が出ています。かくして、米国ブッシュ政権が始めた「反テロ戦争」は文字通り混迷状態にあります。その上、経済グローバル化がひき起す世界的な規模での格差社会化、温暖化を含む環境破壊、金融・食糧・農業・エネルギー危機のために、多くの人たちが貧困にあえいでいます。そのグローバル化の中枢部国家群であるG8が7月に開いた洞爺湖サミットでは、それらの国家が支える投機資本の破壊的活動によって、地球全体が危機的状況に追い込まれていることが明白になりました。また、この9月2日に広島で開催されるG8下院議長サミットは、「平和と軍縮に向けた議会の役割」をテーマにしていますが、米国・ロシア・フランス・イギリスの4大核保有国(核弾頭97%保有)の核軍縮が実行されない限り、核不拡散の対応についても説得力がありません。何よりも唯一の原爆投下国・米国のナンシー・ペローシ下院議長による被爆者への謝罪が必要です。

 そんな状況の中、昨年度の世界の軍事費総額は、前年度比6%増の142兆4千億円にものぼり、冷戦後最高額となりました。とりわけ米国は、膨大な赤字を抱えて国家経済が破綻しつつあるにもかかわらず、史上最高額の国防予算52兆円を要求。さらに、「老朽化」した核弾頭を「信頼性代替用核弾頭(RRW)」に置き換える計画を進め、あくまでも核兵器を手放さない姿勢を示しています。核兵器による先制攻撃の可能性を含む米国のこのような核・戦争政策と外交政策こそ、北朝鮮の核開発計画廃止への躊躇やイランのウラン濃縮・核開発を助長し、NPT体制を崩壊させつつある重要な要因の一つであることは明らかです。人間を大量抹殺する核兵器に「信頼できる」ものなど一切ありません。

 そのような米国の政策を、日本政府は、宇宙の軍事的利用を図る宇宙基本法の成立、ミサイル防衛、在日米軍再編などの面で米国の要求を全面的に受け入れることで支え、基地周辺住民や(イージス艦事故被害者)漁民、ひいては日本国民全体の生活と人命を脅かし、環境を破壊することになんら留意しない態度を取り続けています。米軍再編による沖縄の「負担軽減」には全く実体がなく、同時に岩国、神奈川など他の地域への負担増加が押し付けられ、横須賀には原子力空母が初めて配備されようとしており、日本はますます核化・軍事化されつつあります。軍事費は5兆円弱(一般予算の6%、世界第5位)という膨大な額にのぼっており、在日米軍駐留経費や再編事業のためには、今年度だけでも4200億円近い額の私たちの税金が文字通り浪費されています。さらに、全く経済的に採算が合わないだけではなく、環境汚染と核兵器開発という両方の面で大いに危険性をもつ六ヶ所核燃料再処理工場にも膨大な予算を充てています。その一方で、後期高齢者医療制度、障害者自立支援法に見られるように、社会保障面での予算を抑制し、当事者負担増の結果、私たちの生活は追いつめられるばかりです。

 しかも、航空自衛隊のイラク空輸活動が憲法9条に違反するという名古屋高裁判決を頭から無視する態度を日本政府はとり、政府自らが憲法違反を犯していることになんら責任や恥辱を感じないという驚くべき事態にあります。戦後補償を求めるアジア民衆の法廷闘争や被爆者の認定をめぐる集団訴訟では、日本政府の責任が厳しく問われているにもかかわらず、相変わらず政府は全面的にその責任を認めることはせず、戦後63年もの間苦しんできた人たちの念に真摯に応えようとはしません。平和主義と人権尊重の基本である憲法をないがしろにする政府や政治家に対して、私たちは人道的怒りの声を今こそ上げなければなりません。

 市民の力の連帯で世界を変えることができるということを、最近の「クラスター爆弾禁止条約」の成立が証明しました。私たちが行動すれば、DU(ウラン)兵器や核兵器廃絶も可能です。ヒロシマの願いは、日本国憲法の前文や第9条と同じく、「平和」という一言に尽きます。地球規模の平和を求める私たちは、戦争に備えるのではなく、揺るぎない平和を創り上げる不断の努力を重ねていく活動を広げていきましょう。


                              2008年8月6日



 8・6ヒロシマ平和へのつどい2008(代表 湯浅一郎)参加者一同