1.平和記念資料館、東館 
   
 

東館は、それまでの資料館(今の西館)が、原爆被害だけの展示だったため、なぜ広島に原爆が投下されたのかという歴史がない、また核廃絶への決意、メッセージがないという批判に応えて、1994年6月に開館しました。しかし、2018年の全面改装(東館は14年春から、西館は16年春からそれぞれ2年程度閉館)にむけての論議では、来館者の平均見学時間が45分ぐらい、西館は19分という実情を考え、見学ルートの大幅変更、特に東館の、戦前の被曝に至る歴史についての展示が大幅に圧縮される方向となっているようです。せめて「大本営があった、軍事色の強い街だった事は明確に示すべきだ」といった次元の話し合いになっているようです。原爆の悲惨さをより強く訴えるものになるようです。

今有識者委員会で議論されていることは、心配ですが、さておき、現状を前提にコメントしておきます。

写真は1999年12月 25日、案内される故沼田鈴子さん。
   
 核廃絶」と言っても、福島原発事故、チェルノブイリ等「原子力発電所」の問題には触れいておらず、あくまで「核兵器」に限定されている、放射線被害も扱っているけど「原発」には触れていない、「歴史の展示」についてもう一つ迫力が無い(写真と文章ばかりで本を読むのと余り変わらない、長崎の方がそのあたりは進んでいます)等、問題点・
改善点はありますが、1999年の秋葉市長の平和宣言で「核廃絶への強い意思」が表明されて以来、どんどん改善されてきました。松井一美市長に2011年4月交代、これからどうなるのでしょうか。なお長いこと古いままで説明にも困っていた、今の世界の核弾頭数の地球儀模型が、インド・パキスタン等つけ加えられ、2004年やっと新しいものに更新されています。また、いつも説明している、原爆投下理由説明コーナーが、2004年3月3日、大幅に拡充されました。

写真は2006年12月24日。
   
 

なお、戦前の広島の特徴として、「軍都」「学都」「スポーツの都」の三つが並列的に展示されていますが、日清戦争以来「軍都」として繁栄し、その恩恵で多くの「私学」も設けられ、「学校スポーツ」の余裕も生まれ、日本ではじめての金メダルの織田幹夫さんら多くの「スポーツ」人を輩出することになったこと、いくら足が速くても、中学校以上に進学しなければ、スポーツは出来なかった筈で、他にも音楽、文学、絵画等文化的にも他の都市より一歩進んでいましたが、まず「軍都」が最初に来るという順序をしっかり押さえておきましょう。今も、広島は進学率が高く、地方都市には珍しく「広島カープ」を持ち、「サンフレッチェ広島」もあり、平山郁夫さん等多くの著名な文化人、芸能人を輩出しているのも、全て「日清戦争」から出発していることを忘れてはなりません。

展示内容については以上の点を踏まえた上で、他の優れたホームページ((ヒロシマの心を伝える会,、,広島平和教育研究所ヒロシマ・ピースサイト)にありますので、そちらを見て頂くとして、若干注意事項、見学の仕方についてだけ説明します。

写真は2008年12月26日撮影。
   
 

資料館側は、東館が出来た時点で2時間は見ておいて欲しい、と言われていましたが、実際、東館から西館に行く間は、膨大な書物を読むのに匹敵するようなものですから、勉強熱心のあまり一つ一つじっくりと見ていたら、いくら時間があっても足りません。2時間なら、東館50分、西館50分、その他書籍販売コーナーや証言ビデオコーナー等20分等、タイムキープをちゃんと設定しないと、肝心の西館の被爆の実態に触れた展示を見る時間が無くなってしまいます。

基本的に、資料館の展示は、そこだけで全て済むように設計されており、原爆ドームの模型(歩いて20分もかからない所に本物があるのにそこまで必要か?)まであります。その後の行動予定も勘案して見て貰いたいと思います。

東館の展示の中で目を引くのは、被爆前と被爆後の市内の模型ですが、肝心の軍事施設が密集していた広島城付近がカットされているのは残念です。

   
 

とは言え、今、主要閣僚から「非核三原則の見直し」発言が飛び出したり、「非核三原則の聖域化はおかしい」などの、あたかも「日本も核武装すべきだ」といわんばかりの議論も出ているこの頃ですから、また「いつか来た道」を繰り返さないためにも、事前学習をしっかりやった上で大いに学んで欲しいものです。

色々注文はありますが、しかし今、展示替えで東館の軍都広島の歴史を語る展示が大幅圧縮されるとの報道を聞けば、やはり、無いよりはあった方が良い、被爆に至る歴史を考えるのは確かに難しい、どんなに易しくしようとも理屈っぽくなるのはやむを得ない、無くなってしまえば批判も出来ない、部分的改善でなんとか残しておいて欲しいと考えてしまいます。

また、1999年よりピースボランティアの人達の活動が始っています。皆さん、熱心なボランティア(無償)の方達ですから、時間の許す限りじっくりと説明を聞かれたらと思います。また音声ガイドに吉永小百合さんの説明がふくまれるようになりました。聞いてみたいものです。また、2003年度から広島がなぜ原爆投下対象になったのか等経緯説明が強化されました。

なお2005年8月24日、原爆資料館開館50周年に合わせ、西館から先に見るよう更新計画素案がほぼ固まったと報じられています。

なお、館内写真撮影不可となっていますが、許可を取れば撮影可能です。その場で資料館事務室へ行き(日曜でも当番はいます)、許可を受けられます。写真撮影許可の書類に手早く申し込めば、それですみ、印鑑は要りません。撮影してならないのは、人間の尊厳に関わるような写真等の展示です。館内の学習風景や模型、ロウ人形等はOK。人間の尊厳に関わるような写真、著作権の絡むような写真の複写は駄目です。

写真は2008年12月26日

 
   
              
   
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 2004年に設置された「原爆投下原因説明板コーナー

2004年5月1日撮影。
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 (7)  
 似島特別展示