6.勝順寺の墓石   (中区紙屋町一丁目4−17・さくら幼稚園) 
   
広島銀行本店のすぐ裏。このハンドブックで紹介する寺の墓地の中では最も地価の高い所だろう。又、平和公園からも離れている。こんな場所でも無縁の墓石を写真のとおり、正面からは壁に沿って反対側に並んでいるので、中に入って見なければ判らないが、数は少ないが大事にしておられる。どういう事情かは住職さんに会ってお話を聞いていないので判らないが、爆心地から反対側の四百年の伝統を持つ近代化された寺(そこの地価はたぶんここの10分の1ぐらいだろう)が無縁の墓も傷ついた墓も整理してしまっているのを見ているから、ここの住職さんに敬意を表してしまう。無縁の墓には、御布施も何も寺には収入が入らない。経営としては、保存するのが大変なはずである。広島の一等地中の一等地だから、旅行者にとっても立ち寄り易い場所である。墓地の中にも傷ついた墓石が目に付く。美濃家の墓には昭和二十年八月六日原爆死、貞子二十二才、佳代子二才の文字が刻まれているのが、さらに痛々しさを感させる。